生成AIは、文章作成、情報整理、アイデア出しなどを効率化できる便利なツールです。一方で、入力内容のモデル改善への利用、会話履歴の保存、共有機能や外部サービスとの連携など、情報の取扱いに関する確認事項があります。

 

本記事では、ChatGPT・Gemini・Claudeを利用する際に、入力情報の取扱いに関するリスクを抑えるための設定と使い方を解説します。

ただし、設定を変更しても、会話が直ちに完全削除されること、第三者が一切アクセスできないこと、情報漏えいの可能性がゼロになることを意味するわけではありません。利用中のプラン、機能、契約条件、社内ルールに応じて、公式のプライバシー情報を確認してください。

 

この記事の最終確認日:2026年1月20日
サービスの設定名、保持期間、データ利用条件は変更されることがあります。実際に設定を変更する前に、各サービスの公式ヘルプを確認してください。

 

生成AIを利用する前に知っておきたい4つのこと

生成AIの情報管理では、

「モデル改善への利用をオフにすること」

「会話履歴を削除すること」

「サーバーから完全に削除されること」

「外部の人に見られないこと」

は、それぞれ別の問題です。

 

ある設定でモデル改善への利用を止められても、会話履歴の表示、一定期間の保存、濫用防止のための確認、フィードバック、共有・連携機能などには別の条件が適用される場合があります。

 

個人利用でも企業利用でも、まずは次の4点を確認しましょう。

 

確認すること 確認のポイント
利用中のプラン 個人向け、法人向け、APIではデータ利用・保持条件が異なる場合があります。
モデル改善への利用 入力内容が将来のモデル改善に利用される設定になっていないかを確認します。
保存・履歴・共有 会話履歴、削除後の保持期間、共有リンク、添付ファイル、接続済みアプリを確認します。
入力情報の範囲 個人情報、営業秘密、認証情報、顧客データなどを入力してよい環境かを確認します。

まず守りたい基本原則:機密情報を安易に入力しない

 

生成AIの設定は重要ですが、最初に考えるべきことは

「その情報を入力する必要が本当にあるか」

です。

 

氏名、住所、電話番号、メールアドレス、顧客データ、未公表の業績、契約書、設計情報、パスワード、APIキー、アクセストークンなどは、組織が明示的に承認した環境と手続がない限り入力しないでください。

 

業務で定型約款への同意のみで使えるクラウド型生成AIを利用する場合、デジタル庁の指針は、原則として要機密情報を扱えないとしています。個人情報や機密情報を扱う必要がある場合は、サービスの契約条件、データ保持、権限管理、利用承認、社内規程を確認したうえで、事前にリスクを評価することが必要です。

名前を置き換えるだけでは匿名化にならない

「A社」「担当者B」のように社名や氏名を置き換えることは、情報量を減らすための一手段です。しかし、それだけで安全とは限りません。案件の経緯、地域、日時、役職、少数の属性、数値、添付資料の内容などを組み合わせると、個人や取引先が推測されることがあります。

個人情報保護委員会も、氏名などを取り除いた「匿名化」情報であっても、事例によっては個人を識別でき、個人情報に該当し得ると説明しています。[9] 機密性の高い案件や個人情報を含む相談は、名称を置き換えただけで外部サービスへ入力せず、組織が承認した環境で扱ってください。

ChatGPTを利用する際の設定と注意点

ChatGPTの個人向けサービスでは、会話をモデル改善に使用するかを設定できます。

 

Web版でサインインしている場合は、

プロフィールアイコンから[設定]→[データコントロール]→[すべての人のためにモデルを改善する]を開き、オフにします。

 

オフにすると、以後の通常の会話はモデル改善に使用されません。

 

ただし、この設定をオフにしても、通常の会話履歴は残ります。履歴の削除と、モデル改善への利用停止は別の操作です。モデル改善への利用を止めたい場合はデータコントロールを、不要な会話を消したい場合は履歴の削除を、それぞれ行ってください。

一時チャットを使う場合の注意点

一時チャットは、通常の履歴に表示されず、メモリを作成せず、モデル学習にも使用されない機能です。一時的な相談や、通常の会話履歴に残したくない内容を扱うときに役立ちます。

 

ただし、一時チャットは「情報を入力しても安全」という意味ではありません。OpenAIは、一時チャットを不正利用の監視のためにレビューする場合があり、システムからは30日後に削除すると説明しています。機密情報、個人情報、認証情報などを入力してよい根拠にはならないため、必要性がない限り入力を避けてください。

 

また、評価ボタンなどでフィードバックを送信する場合は、関連する会話がモデル改善に利用されることがあります。機密性の高い会話では、評価・報告時の扱いも公式情報で確認しましょう。

Geminiを利用する際の設定と注意点

個人用GoogleアカウントでGeminiアプリを利用する場合は、[アクティビティの保存]を確認しましょう。

Geminiアプリ内の設定とヘルプから[アクティビティ]を開くか、Googleのマイアクティビティ画面で設定を確認できます。

アクティビティの保存をオフにしても、会話が直ちに完全削除されるわけではありません。

 

Googleは、サービス提供とフィードバック処理のため、会話を最長72時間アカウントに保存すると説明しています。この期間の会話はGeminiアプリのアクティビティには表示されません。

 

不要な会話やアクティビティは削除できますが、画面から見えなくなることと、ストレージから安全かつ完全に消去されることは同じではありません。入力前に情報を選別し、不要な会話は定期的に削除する運用をおすすめします。

個人用アカウントと仕事用・学校用アカウントを区別する

ここまでのアクティビティ設定は、主に個人用Googleアカウントを対象とした説明です。仕事用・学校用アカウントでは、Geminiアプリの設定やデータ保持がGoogle Workspace管理者によって管理される場合があります。

Google Workspace with Geminiについて、Googleは顧客データを、許可なくドメイン外で人間がレビューしたり、生成AIモデルの学習に使用したりしないと説明しています。ただし、業務利用の可否はこの説明だけで判断せず、組織の利用ルール、管理者の設定、契約条件、接続するサービスの範囲を確認してください。

Claudeを利用する際の設定と注意点

Claudeでは、個人向けと法人・API向けでデータ利用条件が異なります。個人向けのClaude Free、Pro、Maxなどを利用している場合は、会話が常にモデル改善の対象外になるわけではありません。

 

Anthropicは、個人向けサービスで、利用者がモデル改善への利用を許可した場合、会話が安全性レビューでフラグされた場合、利用者がフィードバックを送った場合、明示的に学習参加を選んだ場合などに、会話やコーディングセッションをモデル改善または安全対策に利用し得ると説明しています。

 

個人向けClaudeでは、[設定]→[プライバシー]から[Help Improve our AI models]を確認し、モデル改善への利用を許可しない場合はオフにしてください。

 

オフにすると、新しい会話やコーディングセッションは将来のモデル学習に使用されません。ただし、安全性分類器によってフラグされた会話は、信頼・安全のモデル改善、ポリシー執行、安全研究などに使用される場合があります。

 

ClaudeにはIncognitoチャットもあります。Anthropicは、Incognitoチャットを、モデル改善設定がオンの場合でもモデル改善に使用しないと説明しています。ただし、個人情報や機密情報を入力してよいという意味ではありません。保存、フィードバック、安全性対応、法令上の要請などの条件は、公式のプライバシー情報で確認してください。

Claudeの法人・API利用では例外条件も確認する

Claude for WorkやAnthropic APIなどの商用製品では、入力・出力は既定でモデル学習に使用されません。

ただし、フィードバックやバグ報告を送信した場合、または明示的に許可した場合は例外です。

 

APIでは、入力・出力が原則30日以内に削除されると説明されていますが、ファイル保存機能、ゼロデータ保持に関する契約、利用規約の執行、法令対応などで条件が異なる場合があります。業務利用では、学習利用が既定でオフかどうかだけでなく、保持期間、削除、管理者権限、連携先、監査、契約条件を確認してください。

生成AIサービス別・設定確認の早見表

以下の表は、主な確認ポイントを整理したものです。表の設定は、主にモデル改善への利用や通常の履歴表示を制御するものです。保存期間、濫用防止のための確認、フィードバック、共有リンク、接続済みアプリ、法人管理者のアクセス権限まで一律に停止するものではありません。

サービス・対象プラン モデル改善への利用 履歴・保存に関する主な条件 必ず確認する例外
ChatGPT個人向け [すべての人のためにモデルを改善する]をオフにすると、以後の通常会話はモデル改善に使用されません。 通常会話は履歴に残ります。一時チャットは履歴に表示されず、30日後に削除されます。 一時チャットは濫用監視のためにレビューされる場合があります。フィードバック送信時の会話利用も確認してください。
Gemini個人用アカウント [アクティビティの保存]を確認します。 オフでも、サービス提供とフィードバック処理のため最長72時間保存されます。 個人用と仕事用・学校用では設定管理が異なる場合があります。
Claude個人向け [Help Improve our AI models]を確認し、許可しない場合はオフにします。 削除した会話は履歴から直ちに見えなくなり、バックエンドからは30日以内に削除されます。 フィードバック、安全性レビュー、明示的な学習参加などの条件を確認してください。
法人向け・API 製品によっては既定でモデル学習の対象外です。 保存・削除の条件は、製品、機能、契約、管理設定で異なります。 オプトイン、フィードバック、管理者権限、外部連携、保持期間、契約条件を確認してください。

企業で生成AIを利用する場合に必要な対策

企業利用では、個人向けサービスの設定を確認するだけでは十分ではありません。社内で誰が、どの目的で、どのサービスを使い、どの情報を入力できるかを管理する必要があります。経済産業省のAI事業者ガイドラインやデジタル庁の生成AIガイドラインも、プライバシー、セキュリティ、透明性、説明責任、教育、組織的なリスク管理を重視しています。

最低限、次の項目を社内ルールとして整備しましょう。

運用項目 実施内容
利用目的と入力禁止情報 利用してよい業務、入力禁止の情報区分、例外申請の手順を明文化します。
承認済みのサービス・プラン 業務で利用できるサービス、プラン、モデル、連携機能を指定します。
事前審査 個人情報・機密情報を扱う可能性がある用途は、利用前に情報システム・法務・セキュリティ部門等で確認します。
権限管理 最小権限の原則で、利用者・管理者・外部連携の権限を設定し、定期的に見直します。
ログと監査 利用者、用途、設定変更、共有・連携の状況を必要な範囲で記録し、異常利用を確認します。
出力の確認 生成AIの回答を、そのまま顧客対応、契約判断、医療・法律・金融上の判断、公開情報に使わず、担当者が根拠と内容を確認します。
事故対応 誤入力、誤共有、アカウント侵害が起きた場合の連絡先、初動、ログ保全、影響確認の手順を定めます。
教育 利用者に、入力禁止情報、匿名化の限界、プロンプトインジェクション、共有・連携の注意点を継続的に周知します。

法人向け・API向けサービスは有力な選択肢ですが、「法人向けだから安全」と一律に判断しないでください。データ利用、保存期間、暗号化、監査、管理者権限、データ処理契約、ゼロデータ保持の可否などを、利用する製品と契約ごとに確認することが重要です。

よくある疑問

Q. モデル改善への利用をオフにすると、回答の質は下がりますか?

ChatGPTのモデル改善をオフにする設定は、主に新しい会話を将来のモデル改善に使わないための設定です。この設定自体が、現在利用しているモデルの機能や回答品質を下げるものではありません。[1]

ただし、会話履歴、メモリ、過去の会話を利用する機能、フィードバック、保存期間は別の条件で動作します。設定を変更した後は、履歴やメモリなどの挙動も確認してください。

Q. 有料版なら、個人情報や機密情報を入力してもよいですか?

いいえ。有料であることだけを理由に、個人情報や機密情報を入力してよいとは判断できません。個人向け有料プランと法人向け・API向けサービスでは、データ利用や管理の条件が異なります。利用予定の製品・プラン・契約について、モデル改善への利用、保存期間、削除、管理者権限、外部連携、法令・契約上の要件を確認してください。

Q. 一番重要な情報管理対策は何ですか?

もっとも重要なのは、利用環境と目的を確認せずに、機密情報や個人情報を入力しないことです。そのうえで、モデル改善への利用設定、履歴・共有・連携の確認、アカウント保護、企業であれば承認・権限・ログ・教育・出力確認を組み合わせてください。単一の設定だけで、すべてのリスクをなくすことはできません。

まとめ

ChatGPT・Gemini・Claudeをより安全に利用するためには、各サービスの設定を変更するだけでなく、その設定が何を制御し、何を制御しないかを理解することが大切です。

個人利用では、モデル改善への利用設定を確認し、不要な会話を削除し、共有・連携機能を見直し、機密情報や個人情報を安易に入力しないことを基本にしてください。

 

企業利用では、これらに加えて、承認済みサービスの指定、利用ルール、権限管理、ログ、教育、出力確認、事故対応を整備しましょう。

 

生成AIの仕様やデータ利用条件は変わることがあります。設定を一度変更して終わりにせず、公式情報と組織のルールを定期的に確認することが、継続的なリスク低減につながります。